遺言書がなく、口頭での約束だけだったことで、相続手続きで苦労される事例は珍しくありません。
ご相談者は、4人兄弟(姉妹)の末っ子の方で、先日、すぐ上のお兄様が亡くなられての相続についてご相談に来られました。
ご兄弟は、上から長女、次女、長男、ご本人で、今回、長男様が亡くなられたのですが、次女の方は、すでに亡くなられているので、代襲相続人として、甥御さんと姪御さんがお一人ずつおられます。
長男さんは、生涯独身で配偶者、お子さんともはおられません。ご兄弟(姉妹)のご両親もお亡くなりなので、相続人はご兄弟(姉妹)とその代襲相続人になります。
長男さんが、生前、当時ご存命の次女さんを含め兄弟4人で話したときに、長男さん所有のマンションは、妹であるご相談者に相続させ、預貯金と現金は、長女と次女に半分ずつ相続させたいと話したそうです。
その時は、長女、次女、ご相談者の全員が、了解したとのことでした。
しかし、今回長男さんの死により、相続手続きが始まったのですが、すでに次女さんは亡くなっていたので、代襲相続人として甥御さんと姪御さんが入っての相続手続きになりました。
ご相談者が、長男さんがご存命中の、兄弟(姉妹)の合意に基づき、マンションを相続すると言ったところ、甥御さんと姪御さんは「そのような合意があったなんて、聞いたことがない。認められない。法定相続分の通りに、遺産を分けてほしい」との1点張りとのこと。
そこで困ってしまったご相談者が、私に相談に来られたのです。
結論から言うと、甥御さんと姪御さんが同意するか、ご相談者が法定相続分相当の現金をお二人に支払う、などによらないと、ご相談者がマンションをご自分のものにすることは難しいと思われます。
ご相談者は「生前、兄には遺言書を書いてもらいたかったけど、自分からは言い出せなかったのよね。」と悔やんでおられました。
このような残念なことのないように、遺言書を残すことをお勧めいたします。
また、遺言書は、民法の規定の要件を満たさない場合は、無効になってしまいます。また、要件を満たしていても、記述の仕方によっては、無用の争いの元になりかねません。
相続は、ご自身が亡くなられた後のことですので、ご自身の御意思を100%実現できるように配慮を尽くした遺言書の作成が必要です。
ぜひ、私のような専門家の力をご利用ください。
まず、「エンディングノート」とは何でしょうか。
私は、「エンディングノート」とは、
「医療や介護、また葬儀、相続などについてのあなたの考えをまとめ、対策したことを記しておく大切なメモ帳」
と定義しておきます。
そもそもですが、「エンディングノート」はなぜ必要なのでしょうか。
このことから考えてみたいと思います。
私もそうでしたが、65歳を過ぎ、いわゆる高齢期に入った頃、自分の残りの人生をチラッとでも考える人が多いのではないでしょうか。厚労省の資料によると、2016年現在の平均寿命は、男性が80.98歳、女性が87.14歳ですから、まだまだ先のことと思いたいのですが、いつ病気やケガで体の自由がきかなくなるかわかりません。
また、認知症も心配ですね。3年後には、65歳以上の5人に一人が認知症になるとの予測が発表されています。他人事と片付けるわけにはいきませんね。
また、急な病気やケガで倒れ、意識がもうろうとしていて、終末期医療などについての本人の希望や意思を確認できず、周囲の人が困り果てている事例は多くあります。
元気な今こそ、自分の残りの人生を、どのように生きたいのか、また今後起こりうる様々なことについて自分の考えをまとめ、書面にしておくことが必要と思います。
そうすると、病気やケガで体が不自由になった時や、認知症になった時、また終末期医療の選択などで、周囲の人が右往左往しなくてもよくなりますし、ご自分も、自分で望んだ通りにしてもらうことができるようになります。
さて、自分の考えをまとめ、書面にしておくことが必要になっている理由は、わが国の社会に大きな変化が起きていることによります。
振り返ると、日本の社会は、祖父母、両親、子どもの三世代同居は珍しくない時代がありました。
この時期では、人生のエンディング期に起きる様々な事柄は、本人以外の家族が対応し乗り越えてきたことが多かったと思われます。周囲の人が何でもやってくれるのですから、本人が自分の考えをまとめ、書面にしておく必要はなかったのです。
しかし、日本の社会は大きく変わりました。核家族化が進み、現在、三世代同居は、ほとんど見かけません。また、両親と子供による核家族世帯も、子どもの独立により、高齢者の夫婦のみになっている世帯も増加しています。また、近年は、高齢者の単身世帯が増加しています。
大田区では、高齢者の夫婦のみの世帯は、2018年の資料によると26,937件で、7.3%です。お子様がおられても遠方にお住いの場合は、すぐに駆けつけて来られないこともあるでしょう。
また、単身高齢者の世帯は41,907件で、大田区の世帯の11.3%です。
現在の日本の社会は、周囲の人に支援していただくことが難しい方が増えています。お一人お一人が、自分の「エンディング」の希望、意思を考えて、決めた内容を書面にして、周囲の人に伝えておくことをお勧めします。
こうした、自分の考えをまとめ、書面にしておく書面が「エンディングノート」です。
しかし、「エンディングノート」には、一つの問題があります。それは、「エンディングノート」には法律上の効力がないのです。そこで、法律的に効力のある「公正証書」にしておくことをお勧めします。
このことは、この後で詳しく説明します。
さて、「エンディングノート」に書いておくことはどういうものでしょうか。
ぜひ書いていただきたい項目は
- 自分の人生の振り返りに関すること
- 財産管理に関すること
- 介護に関すること
- 緊急時の医療に関すること
- 死後事務や遺産相続に関すること
この5点の内容については、別の動画で一つずつ解説します。