東京都大田区の「終活」専門の行政書士、清水勝です。

今回は、「エンディングノート」に書いていただきたいことの2番目、「財産管理」について解説します。

これは、体が不自由になった場合や、認知症になった場合の財産管理についての解説です。 自分で財産を管理することができなくなった場合ですが、 そうした場合に自分の財産を管理するための制度が、4種類あります。

① 法定後見 ② 任意後見 ③ 委任 ④ 民事(家族)信託 です。

① の法定後見は、「終活」をしてなかった方が、やむを得ずに取れる最終手段になります。 ② の任意後見と③の委任、そして④の民事(家族)信託は、元気で、自立している時に、将来に備えて行う対策になります。

この4制度を解説する前に、認知症について学びましょう。

厚労省の資料によると、3年後の2025年には、認知症の人が700万人になるとの予測があります。 これは、65歳以上の人の5人に1人の割合になります。 人ごとにはできないですね。 認知症は、脳の病気や障害など,さまざまな原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状況です。 なお、認知機能とは、物事を正しく理解、判断し、適切な実行するための機能、のことです。 さて、認知症になった場合の財産管理について考えてみましょう。 認知症になると、預金通帳やカードなど重要なものを無くすことがあります。また、以前、各地で起こったことがありますが、認知症の人が業者にだまされて高額の布団などの購入契約をしてしまったこともありました。 もし、何も準備せず認知症になってしまうと、「法定後見」を家庭裁判所に申し立てて、家庭裁判所に選ばれた後見人の下で財産が管理されることになります。

しかし、この家庭裁判所に選ばれる後見人には問題点があります。

その問題点とは ① 申し立ての手続きを含め、後見人が選ばれるまでに時間と労力がかかる ② 家族等も後見人候補として推薦することはできるが、現状は、弁護士や司法書士などが選ばれることが多く、適任者が選ばれる保証がない ③ 医療についての同意権がない ④ 死後の事務手続きができない

そこで、法定後見に代わるものとして、お勧めするのが「任意後見」です。

ただし、この任意後見制度は、本人が自立している時期でないと使えません。本人が認知症になってしまった後は、「法定後見」のみになります。

「任意後見」について解説します。 「任意後見」は、公正証書での契約が必要です。 その「任意後見契約」は、現在は元気で自立した人が、認知症になった場合に備えて、本人が信頼できる人と契約する制度です。 任意後見人が行う仕事は、本人と本人が信頼できる人との合意に基づき、公正証書に具体的に書き込みます。 例としては ① 預貯金や証券口座、また不動産の管理 ② 銀行印や実印の保管 ③ 日常の契約関係 などです。 この「任意後見契約」は、本人が認知症になった後に使われるものですので、頭はしっかりしているのですが、病気や事故で体が不自由になった場合は使えません。

そこで、頭はしっかりしていても病気や事故で体が不自由になった場合に備えての対策として「委任契約」があります。

「委任契約」は、本人(委任者といいます)が、信頼できる人(受任者といいます)との間で結ぶ契約です。信頼性を高めるために公正証書にすることが望ましいです。 「委任契約」の内容は、「任意後見契約」に近いものがあります。 例としては ④ 預貯金や証券口座、また不動産の管理 ⑤ 銀行印や実印の保管 ⑥ 日常の契約関係 などです。 「委任契約」と「任意後見契約」の違いですが 「委任契約」では、定期預金の解約や不動産の売却など(法律上「処分行為」といいます)はできませんが、任意後見契約では、可能です。 「委任契約」は、本人の頭が元気なことが条件ですので、あくまでも決定権は本人にあります。そのため委任を受けた受任者の権限には制限があります。 そこで「委任契約」では、定期預金の解約や不動産の売却など(法律上の「処分行為」)は、別途本人の委任状が必要になります。 本人は、自分の財産を自分で管理できる安心感があり、また代わりに行ってほしいことは受任者にお願いすれば行ってもらえるので、不安なく生活していくことが可能になります。

「任意後見契約」の内容は、本人が認知症になった後に開始されるものです。 そのため、任意後見人は、「任意後見契約」に基づいて、決定し実行することになります。 この「委任契約」は、「任意後見契約」と併せて「委任及び任意後見契約公正証書」としておくと、頭はしっかりしているが体が不自由になった時から認知症になった時まで、切れ目なく本人の希望の通りに支援を受けていくことができます。

自分で財産を管理することができなくなった場合に、自分の財産を管理するための制度の4番目

「民事(家族)信託」については、別の動画で解説します。

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