山田一郎さん(仮名)は、現在、父親の太郎さん(仮名)を介護しています。
先日のことです。父親の老人ホームの経費を引き落としている預金口座の
残高が減ってきたので、他の銀行の預金口座から移動することになりました。
しかし、これが大変な時間と労力を要することになりました。
銀行から「子どもであっても父親の太郎さん以外の方が、手続きをする場合
は、ご本人の『全文自筆の委任状』が必要です」と言われました。
この『全文自筆』があれほど大変なことになるとは、その時はわかりませんでした。
太郎さんは、頭はしっかりしていますが、ここ数年、室内でも歩行器なしでは歩行
が困難になっています。
また、太郎さんは手が思うように動かせなくなっていて『全文自筆の委任状』は
とても書ける状態ではありません。
そこで、もう一度、銀行に相談したところ。こう言われました。「署名だけは、
自筆でお願いします。それ以外は、身内の方が太郎様に手を添えて書いても結構
です」と。
太郎さんは、署名だけは何とか書いてくれました。
この経験から、一郎さんは、今後、太郎さんに委任状を書いてもらうのは無理だ、
と感じました。
そこで、一郎さんが太郎さんに代わって、銀行や役所の手続きを代行できる
「委任契約」と、認知症になった時に備えての「任意後見契約」の公正証書を
公証役場で作成しました。
ちょうど、コロナの時期で太郎さんの外出は禁止でしたので、公証人が老人ホーム
に出張してくれて、無事作成できました。