生前の対策と死後事務の違い

これまで、人生の最終章において、自分らしく生きるための対策として、以下の3つのことを解説してきました。

1.(財産管理)委任契約

2.任意後見契約

3.尊厳死宣言

 

これらはすべて、生前の対策です。

しかし、自分が亡くなった後のこと、つまり「死後事務は勝手にやってよ」、と何の対策もしない「丸投げ」にしたのでは、周囲が大変に困ることになります。

 

死後事務といっても、初めて聞くという方もおられると思いますので、簡単に説明しますと

 

死後事務とは、故人の死亡後、相続手続きの手前までに発生する手続きの総称のことです。

具体的には、大きく3点あります。

 

一つは、葬儀に関することです。

二つ目は、お墓に関することです。

最後の三つめは、行政手続きやその他の死後の手続きのことです。

 

では、以上の3点について、もう少し詳しく解説します。

3点の詳しい説明(葬儀、お墓、行政手続き)

一つ目の葬儀に関することですが

最近の葬儀は多様化していて、それぞれの希望や事情により様々な形態があります。

 

伝統的といいますか、「葬儀⇒一般的な納骨の場合」を以下に示します。

 

病院等からの連絡

遺体搬送、仮安置

葬儀についての打ち合わせ、死亡届の手配

通夜、葬儀、出棺 【※1】

火葬

初七日法要

四十九日法要および納骨 【※2】

 

この中で自身の意思を明らかにしておくことをお勧めすることがあります。

 

【※1】の「通夜・葬儀」です。

最近は家族葬のように家族のみを基本として会葬者を絞って行う葬儀が増えています。

また、以前は通夜が1日、翌日の告別式が一日と、二日間で行う葬儀が主流でしたが、最近は通夜と告別式を1日間で行う葬儀が増えています。

 

さらに、通夜・告別式も行わず、直葬といって火葬場にて短時間で故人とのお別れをするのみという葬儀も増えています。

 

直葬とは、火葬だけを執り行い、読経供養などの宗教儀式は行わず、親戚や知人の弔問を受けることなく、しめやかに家族だけで弔う、シンプルな葬送スタイルのことです。

(平安祭典 HPより)

 

次いで、【※2】の納骨です。

最近は、墓じまいをする人を含め、お墓を持たない人が増えています。

また、“お墓に納骨する代わりに、納骨堂への納骨や海洋散骨、樹木葬”という新しい形態の納骨も増えています。

どのような葬儀を希望するかは、ご自分が元気で自立している今、どのようにしたいのかを決めて、できることなら対策を実行しておくことをお勧めします。

 

例えば、海洋散骨を希望するのであれば、業者の情報を入手して、業者を決めて、契約をしておく、などです。

 

さて、二つ目はお墓のことです。

 

あなたに質問です。

あなたは、お墓への納骨を希望していますか

希望する場合、お墓は先祖代々のお墓を含めて既に用意できていますか

 

または、どのように用意しようと対策を立てていますか

 

また、お墓を希望しない場合で、あなたが所有または管理しているお墓がある場合、そのお墓の墓じまいはどうしようと考えていますか

これらの様々な一つひとつのことについて、あなたの意思を明らかにして、元気で自立している今、必要な対策を実行しておくことをお勧めします

 

「死後事務」の三つめは、行政手続きやその他の死後の手続きのことです。

 

これは大きく分けて3つになります。

  • 区役所等での死後事務手続き
  • 公的年金についての手続き
  • 公共料金の変更・停止の手続き

 

まずは、(1)の区役所等での死後事務手続きから解説します。

個人の最後の住所地の市区町村(以下「区役所等」という)での死後事務手続きとなります。

世帯主の変更手続、各種公的書類の返却、葬祭費や還付金等の請求手続きなど多岐にわたります。

区役所等に手続きをするには、次の5点セットを持参の上、役所内を回れば1時間程度で完了できます。

手続きに必要な資料(5点セット)とは

5点セットの内容は

  • 故人の死亡診断書等のコピーまたは死亡記載の除籍謄本
  • 故人と遺族代表との関係を証する戸籍謄本
  • 遺族代表の本人確認資料(マイナンバーカード、運転免許証など)
  • 遺族代表の振込先口座番号情報
  • 遺族代表の認印

 

さて、区役所等における主な死後事務手続きは、以下のようなものがあります。

 

  • 世帯主の変更(死亡後14日以内)
  • 各種公的書類の返却(健康保険関係、介護保険関係、医療介護等助成関係、障害福祉関係)
  • 葬祭費支給請求(2年以内)
  • 各種還付金等の支給請求
  • 区民税、固定資産税等の納付者変更届

 

このうち、④の各種還付金等の支給請求は、相続人(の一人)として手続きをしなくてはならないので、行政書士などの第三者が任意代理人になっても手続きはできません。

 

しかし、有効な遺言書があり、遺言執行者が指定されている場合は、行政書士などの第三者の遺言執行者でも相続人に代わり手続きができます。

 

大切な人が亡くなった時に、相続人がこのような死後事務手続きを行うのは、精神的にも肉体的にも負担が大きいです。

第三者に依頼できるようにしておくことは、経験してみないとわかりにくいことでしょうが、とても大切です。

こうしたことも遺言書が重要と私が強く言う理由の一つです。

 

次に公的年金の手続きです。

 

公的年金は国民年金、厚生年金、共済年金に分けられますが、手続きは年金事務所で一元化されているので、3つのどの年金受給の場合でも、年金事務所で手続を行えばOKです。

 

それでは、年金事務所での死後事務手続きで頻出の「年金停止及び未支給年金請求」と「遺族年金請求」について解説します。

 

  • 年金停止及び未支給年金請求

年金受給者が死亡した場合、年金事務所にて年金停止及び未支給年金受給手続きを行います。

年金は年6回、偶数月の15日に前2か月分が支給されますが、月の途中で死亡した場合、未支給年金請求手続きを行うことにより、当該死亡月の年金を遺族が満額受給できます。

 

  • 遺族年金請求手続き

未支給年金に加えて、遺族年金が受給できる場合は、併せて手続きを行います。

なお、基本的には遺族基礎年金や遺族厚生年金などの遺族年金等の受給に関しては、必ず遺族自身で年金事務所に確認してください。

 

次に、事後事務の3点目の「公共料金の変更・停止の手続き」について解説します。

 

※公共料金には、電気、ガス、水道、NHK、固定電話、携帯電話、プロバイダー契約、クレジットカードなどがあります。

 

 

 

 

基本的な流れを図示すると

 

公共料金の利用料請求書を確認

※利用請求書は、口座引落明細でもよい

 

手続窓口へ死亡の連絡及び手続必要書類の発送依頼

 

名義変更(利用休止)手続き書類の記入及び返信

 

となります。

 

 

さて、以上解説してきた「死後事務」ですが、相続手続きとは異なり、身内が実務を行うことが通例ですので、本人に身寄りがない場合や、頼れる家族がいない場合はどうしたらよいでしょうか。

 

このような場合は、「死後事務委任契約」を準備しておくことをお勧めします。

 

「死後事務委任契約」というのは、本人の生前に、本人の死後事務を受任者に委託できるように契約を締結しておくものです。

「死後事務委任契約」においては、受任者と、委任する死後事務の内容を決定し、契約を締結することになります。この契約は公正証書にするのが一般的です。

 

 

死後事務委任契約締結の流れは以下の通りです。

 

「死後事務委任契約」締結の必要性を確認

 

「死後事務委任契約」文案作成

 

公証役場での打ち合わせを経て公正証書として完成

 

 

 

まず、

  • 死後事務委任契約締結の必要性を確認

 

ですが、キーパーソンとなる方が推定相続人ではない場合、死後事務を担うにあたって「死後事務委任契約」は必須となります。

また、推定相続人の立場であっても、委任者の意向を特定の相続人に委ねたい意向がある場合、もしくは相続人間で死後事務を巡って争いが予想される場合も、死後事務委任契約を締結することが望ましいです。

 

  • 死後事務委任契約文案作成

 

契約書文案作成にあたり、委任事務内容として「葬儀に関すること」、「納骨に関すること」、「その他の死後事務手続きに関すること」の3つに大別して作成します。

 

親族等のキーパーソンが死後事務受任者となる場合は、これら3つの死後事務を包括的に担える内容で文案作成を行うことが基本になります。

 

他方、親族以外の第三者が受任者となる場合、委任事務の範囲に注意を払う必要があります。また、同時に実務上ですが、親族の連絡窓口を確保していざというときには受任者側から連絡、対応できるようにしておく必要があります。

 

  • そして、公証役場に作成を依頼して、完成です。

 

これで、死後事務手続きについての解説を終わります。

ご不明のことは、何でも私までお問い合わせください。

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